どうも野球好きのためのフォーラムサイトgeek894.com管理人の894です。
今回は、「セイバーメトリクスってなんだよ」「俺文系やから統計とか数学とかよくわからへん」という方々でもセイバーメトリクスを理解できるように、セイバーメトリクスの基本的な部分についてできるだけわかりやすく要点を絞った解説をしていこうと思います。
最後の方に、おすすめの本も紹介していますので、この記事を読んで興味を持たれた方は合わせてどうぞ!
セイバーメトリクスとは
セイバーメトリクス (SABRmetrics, Sabermetrics) とは、野球においてデータを統計学的見地から客観的に分析し、選手の評価や戦略を考える分析手法である。
セイバーメトリクスは、主にアメリカのメジャーリーグを中心に発展してきた考え方ですが、最近では日本のプロ野球でも浸透し始めています。
「マネー・ボール」という映画を見て、セイバーメトリクスのことを知った人も少なくないかもしれません。
字面だけ見ると難しそうな気はしますが、要は野球の主観的な印象でしか語ることができないような部分を数値化して分析していこうという考え方です。
従来の打率や防御率ような指標だけではあまり高い評価がされなかった選手も、セイバーメトリクスの登場で別のところでチームに貢献していると評価されるようになりました。
(当然、何の貢献もしていない選手は従来同様評価されません。)
あるいは、チーム運営に深く関わることもあります。
例えば、セイバーメトリクスの分析手法で用いられる「OPS」や「RSWIN」などの指標をもちいながら、実際にチームの打順や投手起用などを決定することもあります。
こういった「データを集めて視覚化すること」や「それらを用いてチーム運営に関する決定をすること」などなどをひっくるめてセイバーメトリクスなのです。
セイバーメトリクスの活用
セイバーメトリクスはただデータを分析するだけでなく、
- 「投手交代の時期」「ポジショニング」などの作戦や戦術の領域
- 「選手発掘・獲得」などのスカウトの領域
- 「どのような選手に育てるべきか」「どのような練習をすべきか」などの選手育成の領域
などなど、様々な方面に活用されています。
当然、野球ファン同士で、選手について語り合う時にセイバー指標を持ち出すこともできます。(ぜひgeek894.comで語り合っちゃってください!)
セイバーメトリクスの基本的な考え方
セイバーメトリクスの基本的な考え方として以下の様なものがあります。
「選手の価値=勝利への貢献度」
セイバー指標の代表格として根強い人気を持つ「OPS」という指標が評価されている理由も「得点との相関(関係性)が高いから」です。
データを基にした評価ですので、当然客観的な評価になります。
客観的な選手評価が可能になるため、主観的な印象が入らない純粋な勝利への貢献度を調べることができるのです。
主観的な印象というと、「あの選手はチャンスに弱い」や「この投手はいつも大事な場面で打たれる」などがありますね。
このような「チャンスに弱い選手」や「ピンチで打たれる投手」もデータを使って客観的に示すことができるのが、セイバーメトリクスの素晴らしいところだといえます。
(主観を完全に捨てるために実際の野球は一切見ないというアナリストまでいるとか…)
指標は分析のための道具である
よく「OPSなどの指標がセイバーメトリクス」だと勘違いされますが、それだと△です。
セイバーメトリクスの重要な点は「統計データによる客観的な視点から戦略や選手の評価を論じること」にあります。
セイバーメトリクスの例としてよく挙げられるのが、「チームが一番効率よく得点をあげるための打順を考えること」です。
例えば、一番打者に求められる能力と3番打者に求められる能力は大きく違いますよね?
一般的には、「一番打者には出塁率、二番打者には小技、クリーンナップには長打力」などと言われることが多いようです。
これらをより客観的に分析していくことでチームの勝率を上げることがセイバーメトリクスの一番の命題です。
セイバーメトリクスの例-「ピタゴラス勝率」
ここまで、セイバーメトリクスの基本的な考え方について見てきましたが、少しだけセイバーメトリクスの例としてピタゴラス勝率をご紹介します。
このコラムでも定期的に各チームの成績のまとめで使用していますね。
ピタゴラス勝率とは、チームの得点と失点の関係からそのチームの勝率を予測することができるものです。
野球だけでなくバスケットボールリーグなどでも使われており、リーグ制であればほとんどのスポーツに適用できると言われています。
ピタゴラス勝率の計算式
ピタゴラス勝率は以下の式から計算されます。
中学校の数学で習った三角形の「ピタゴラスの定理(三平方の定理)」を連想させることからピタゴラス勝率という名前がつけられたようです。
- 得点と失点が同じ値のとき勝率は50%になる。
- 得点が失点を上回るほど勝率は50%より高くなっていく。逆に失点が得点を上回るほど勝率は50%より低くなる。
- 失点が0で得点が1以上なら勝率は100%になる。逆に得点が0で失点が1以上なら勝率は0%になる。
ピタゴラス勝率の例
式だけ見ていてもピンとこないかと思いますので、実際の例を示してみます。
以下は2015年シーズンのセ・リーグの順位と勝率を示した表です。
順位 | チーム | 勝率 | ピタゴラス勝率 | 得失点差 |
1位 | ヤクルト | .539 | .551 | 574-518=56 |
2位 | 巨人 | .528 | .549 | 489-443=55 |
3位 | 阪神 | .496 | .377 | 465-598=-133 |
4位 | 広島 | .493 | .533 | 506-474=32 |
5位 | 中日 | .446 | .468 | 473-504=-31 |
6位 | 横浜 | .437 | .460 | 508-550=-42 |
日本のプロ野球の順位はチームの勝率によって決定されます。
順位を見ると実際に勝率の順に並んでいるのがわかるかと思います。(当たり前ですが)
ここで、ピタゴラス勝率の方に注目してみると、ピタゴラス勝率と順位の関係が正しくないことにお気づきでしょうか?
ピタゴラス勝率は、あくまでも得失点差から勝率を予測しているだけなので当然100%正しい勝率が計算されるわけではないのです。
それでも、かなりの精度で勝率を予測できる指標として重宝されています。
実際に、阪神と広島以外は概ねピタゴラス勝率と同様の勝率を残しています。
(特にこの年の阪神の成績はイレギュラーだといえます)
ちょっとだけ2015シーズンのおさらい
この年は、それまで2年連続最下位だったヤクルトが優勝を決め、黒田投手の復帰で注目されマエケンのラストイヤーとなった広島カープはCSすらも逃してしまうなど激動のシーズンでした。(山本昌を始め多くのレジェンド選手が引退した年でもありました。)
また、「混戦のセ・リーグ」と言われたのもこの2015シーズンで、一時は全チーム借金持ち(負け越し)という事態に陥ったことも印象的ですね。
そんなわけで、実際の勝率も3位以下の全チームが5割を切っています。
本当に混戦で、最後の最後までどのチームが優勝してもおかしくありませんでした。
ピタゴラス勝率を用いたシーズンの分析
セイバーメトリクスの解説ですので、少しだけ分析っぽいことをしてみたいと思います(笑)
先述の通り、ピタゴラス勝率と実際の勝率にはギャップが生じます。
そのギャップの生じた理由を探っていきたいと思います。
まずは、以下をお読みください。
ピタゴラス勝率に比べて実際の勝率が良いということは、運と偶然が味方した勝利が多いというのがこのメトリクスの見方です。つまり、和田阪神はラッキーパンチで15勝していたという見方があります。
その逆が広島です。勝率の差は、0.035、実に5勝分損していた計算になります。米国では、この負け勝率差分は監督の采配能力の無さと言われているそうですが、さすがに広島ファンが怒るでしょうね。
事実、ピタゴラス勝率通りであれば阪神はぶっちぎりの最下位のはずでした。
得失点差を見てみると、465-598=-133とどうしてこの得失点差で.496も勝てたのか想像もつきませんよね(笑)
そんな阪神がどうやってこの勝率を残したのかについて語るとそれだけで1つの記事がかけてしまいそうなのですが、主な理由は以下の二点です。
- 負けパターンで大量に点数を取られる試合が40戦以上あったこと。
→これで失点が大量に増えた。
- 接戦でゲームを守るリリーフ陣が優秀だったために接戦を拾うことができた。
→55勝が3点差以内の攻防。
この年の阪神は70勝71敗でシーズンを終えましたが、そのうちの55勝が3点差以内で勝ちきったというのだからすごいことです。
その上、負け試合では大量得点で負け続けてしまったものだから、ピタゴラス勝率がこのようになってしまったという本当にイレギュラーな結果なのです。
もちろん、打線が点を取れなかったことも原因の一つといえそうです。
反対に広島カープの得失点は506-474=32点と、本来なら3位でおかしくありません。
(実際中日との最終戦を勝ちきれれば3位が確定していたのです…)
こうなった要因としては、引用にもありましたが、少なくとも5勝は采配などの要素で負け越していることがあります。
実際、2015年緒方監督就任1年目は、緒方監督へのバッシングが酷かったですね…。
継投策や代打起用などの他、この年の広島に多かったミスと言えば「ヒットエンドラン」の失敗でしょうか。(カープのエンドラン成功率はリーグ6位でワースト)
更に詳しく言うと、72企盗塁45成功27失敗という1試合分のアウトを盗塁死のみで与えていることになります。
実は、これまでセオリーとされていたバントやエンドランも実は自ら得点期待値を下げる行為であるとする考え方もあります。
このように、監督の采配によってはチームの勝率を大きく下げてしまうこともありえるわけです。
最後に
長くなりすぎましたが、最後に私のおすすめのセイバーメトリクス関連の本をご紹介します。
野球などのスポーツデータ解析で有名なデータスタジアムさんが出版された本でセイバーメトリクスを全く知らない方でも理解しやすい内容になっています。
統計学と聞くと少し身構えてしまうかもしれませんが、意外ととっつきやすくて面白い分野です。
セイバーメトリクスを理解してさらに野球を楽しんじゃいましょう!
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