よく旅行をする人や、美しい3DCGのゲームを遊ぶ人の中で、なぜか見ている景色に怖さを感じたことはありませんか?
実はこの現象は建築学にも利用されており、なぜ怖さを感じるのかという理由もきちんと存在します。最近では、SNSや「8番出口」などの作品を通じて、“リミナルスペース”という言葉が広まりました。
現実の静けさを描くリミナルスペースと、ネット発の恐怖を描くバックルームの違い――つまりリミナルスペースとバックルームの違いを知ることで、同じ無人空間でも見方が変わります。理由が分かれば、映える写真や映像を意図的に作ることも可能です。旅行や3DCGの世界をより深く楽しみたい人にこそおすすめです。
リミナルスペースとは何?
リミナルスペースとは、本来建築用語で移動手段に使われる扉や通路のことを指します。しかし、人通りの多い通路に誰もいないことで雰囲気が閑散としていたり、老朽化した扉に恐怖を覚えたりすることがあると思います。皆さんも普段通り慣れている道をたまたま夜通ることになったとき、不思議な恐怖を感じたことはありませんか?
そんな雰囲気を率先して感じたい人から注目されるようになり、インターネットミームとしてリミナルスペースという言葉が使われるようになりました。SNSでもリミナルスペースというタグと共に、あらゆる場所の写真が投稿されるようになり、近年かなり話題になっています。
リミナルスペースが怖がられている理由とは
リミナルスペースとは、建造物が本来の役目を果たしていない場合に恐怖を感じる場所として認知されています。例えば学校の怪談は、本来大勢の人が勉強するはずの場所に人がいないため、目的を真っ当しておらず、何が起こるか分からないと感情につけ込むことで怖さが増幅します。同じような理由で遊園地や駅の構内なども人が少ないことで、何が起るかわからないと恐怖を感じる人が多いことでしょう。
そのため廃墟になった遊園地や病院などが心霊スポットとして話題になることが多くなっています。
リミナルスペースに必要な要素
恐怖を感じるリミナルスペースとは、無人であることが条件です。特に普段は人の沢山いる場所に人がいないと恐怖を感じるリミナルスペースになりやすいです。そのため、リミナルスペースの映えを狙っている人は以下に紹介するような建造物の写真を無人のときに撮影してみましょう。
- 駅構内
- 営業時間開始直後や終了時間直前のスーパー
- 空車の多い時間帯を狙った駐車場
- シーズン外のレジャー施設
始発時間直前の駅構内は恐怖心を煽るリミナルスペースとしては有名なので、最寄りの駅の建物が古いとより恐怖心を煽ることができるでしょう。
より怖さを際立たせるリミナルスペース
恐怖心を煽るリミナルスペースとは、必要以上に物語が存在しないことです。見ている人にある程度妄想させることが重要で、SNSでリミナルスペースの写真を投稿している人も、あまり多くを語っている人はいません。多くを語らないことで閲覧者になぜと思わせることが恐怖心に繋がっています。
もし無人の駅や営業時間外のスーパーに、自分以外の人間が考えるように立っていたら怖いとは思いませんか?そんな恐怖心を無人スポットの写真という媒体にして、感情に揺さぶりをかけているのがインターネットミームとして有名になったリミナルスペースです。
リミナルスペースのリミナルってどんな意味?
リミナルスペースとは、境界や中間に位置する場所という意味があります。本来ラテン語のlimenや英語のliminalを建築用語として使っていますが、人類学ではliminalityという言葉で認知されています。いずれも中間的や境界線などの意味が含まれているため、リミナルスペースは通路や扉に使われることが多いです。
リミナルとサブリミナルの違い
リミナルスペースとは、通路や扉などの境界線の空間を指す言葉です。対してサブリミナルは知覚できるレベルの感覚をさらに低くした刺激のことです。そのため、サブリミナルスペースという言葉はあまり使われていません。しかし、リミナルには中間的な意識という意味もあるため、サブリミナルと合わせて人間の意識状態を指す言葉として使われています。
リミナルスペースとバックルームの違いは?無人の怖さが真逆
リミナルスペースとバックルームは、見た目こそ似ていますが、根っこはまったく別の文化から生まれた存在です。どちらも「無人空間の不気味さ」を描いていますが、片方は現実の静けさ、もう片方はネットが作り出した恐怖です。
最近ではSNSや映像作品でも両者が混同されやすく、意味を正しく理解することで表現の幅も広がります。
こちらでは、両者の誕生背景や表現手法を比べながら、その違いを分かりやすく解説します。
8番出口で話題の「無人空間」が怖い理由
リミナルスペースとバックルームの違いは、誕生した背景と表現の目的にあります。
バックルームは2019年5月、掲示板4chanに投稿された“黄色い部屋”の画像から生まれました。
参考サイト:MOYVIE WALKR
「現実からノークリップして外れた先」という説明が添えられ、ユーザーが階層構造や探索記録を加えて神話化します。2022年、当時16歳の映像作家ケイン・パーソンズが公開した短編映像が大反響を呼び、現在はA24による映画化も進行中です。
一方、リミナルスペースの起源は人類学者アルノルド・ファン・ヘネップの「liminality(境界性)」にさかのぼります。空港ロビーや連絡通路のように“前でも後でもない空間”を捉える美学として建築や写真の分野に広がり、SNSでは静寂や郷愁を味わう表現として定着しました。
要するに、リミナルは現実の無人空間を写し取る文化、バックルームはネットで語られる架空の迷宮。どちらも“境界”を題材にしながら、前者は静けさ、後者は恐怖を描き出す世界観として棲み分けています。
なぜ「静けさ」が怖い?空間が作る恐怖のメカニズム
リミナルスペースとバックルームの違いは、恐怖の「作り方」にあります。
バックルームは最初から“何かがいる”世界として設計され、蛍光灯の唸りや反響音、湿った床の感触まですべてが脅威の気配を演出します。エンティティや危険度の設定が細かく、観る人は物語の中を探索する感覚に包まれます。
対してリミナルスペースは“誰もいない”ことが怖さの核心です。人が使うはずの空間が空白となり、照明や色温度のズレが現実の静けさを強調します。情報を削るほど、観る人の記憶が重なり、不安や懐かしさを呼び起こします。
つまりバックルームは“脅威が迫る恐怖”、リミナルスペースは“立ち尽くす静寂”。どちらも不安を題材にしながら、方向は真逆です。表現者は描きたい感情に合わせて、この二つを意図的に使い分けるのが効果的です。
無人空間を見分ける3つのポイント
リミナルスペースとバックルームの違いを見分けるコツは、物語・空間・タグの3点です。
まず物語性。投稿文に「レベル0」「ノークリップ」「探索記録」など設定があるなら、それはバックルームです。物語や危険度を説明する構成は、世界観を体験させるための要素だからです。
次に空間の性質。バックルームは終わりのない迷宮のような構造が多く、リミナルスペースは深夜の駅や閉店後のモールなど、現実に存在する“使われていない時間”を切り取ります。
参考サイト:Game park
最後にタグと色調。黄色い照明や無限廊下などのモチーフを使う場合は #backrooms、現実の光や陰影を生かした写真は #liminalspace を選びましょう。
作品の主眼が物語か空気感かを意識するだけで、投稿はぐっと伝わりやすくなります。
まとめ
リミナルスペースとは、本来は通路や扉など“移動のための空間”を指す建築用語です。ところが、誰もいないその光景がSNS上では独特の怖さを生むと話題になりました。人がいるはずの場所が空白になることで、私たちの記憶や感情が刺激され、不安や懐かしさが同時に湧き上がるのです。
また、リミナルスペースとバックルームの違いに注目すると、前者は現実の静寂を、後者はネット上で構築された恐怖を描く点で異なります。無人空間の“理由のなさ”に想像をかき立てる点は共通しており、その曖昧さが多くの人を惹きつけているのです。
