8月7日のNHK総合での東京五輪野球決勝戦(日本対米国)の世帯平均視聴率(関東地区)は、37%で、東京五輪放送対象となった全競技のうち最高値を記録した。栗林良吏選手がアメリカを2アウトまで追い込んだ9回表では、視聴率44.2%まで上昇した。
金メダルへの賭け
ブックメーカージャパンの直前公表オッズは、日本がFavoriteの1.5(-200)で、アメリカがUnderdogの2.7(+170)だった。事前の分析では、米国チームと比較して、日本代表チームの投手が優れている点が最大の利点と見られた。日本チームは、アメリカチームより試合数が1試合少なく、水曜日から投手が十分休憩時間がとれていたのは好ましい条件となった。
野球が正式な競技種目として認定された東京五輪では、日本での開催が決まって以来、日本代表の初金メダル獲得が大きく期待されていた。コロナにより中止・延期となった異例のオリンピックであり、開催間際までオリンピック開催中止の声が上がり、祝祭感は欠けていた。しかし、大会が開催されると日本のメダルラッシュと相まって確実に国民のムードも高揚した。日本選手団メダル最多の功績を称えるメディア報道が溢れる最中、オリンピック開会式のテレビ中継については46.7%(瞬間最高49.8%)の高視聴率を記録した。
パリ五輪は野球を除外
コロナウイルスにより2020年のオリンピックが1年後の2021年に延期されたため、次の2024年夏季オリンピックは3年先となった。東京五輪では日本が開催国であったため、野球が追加競技として認められ、出場は6チームという少数でも行われた。野球はまだオリンピックの常連種目の地位を獲得していないため、残念ながらパリ五輪では再び除外されている。パリには新たな野球場の建設が必要となり、国際オリンピック委員会(IOC)の予算削減方針により野球は対象種目から外された。
野球は北米とアジア地域では人気があるが、ヨーロッパ諸国では主要スポーツから外れる。野球は世界的普及度の低さ、ジェンダーバランス(女性の同一競技がない)、人数、ハード面など複数の要因により、オリンピックの正式競技として毎回採用されないのが現状である。もう一つの要因として、夏季オリンピックはメジャーリーグのシーズン中に開催されるため、MLBのスター選手はオリンピックに参加しないことが挙げられる。ナショナルホッケーリーグは、選手がオリンピックに参加できるよう五輪開催中に2週間リーグを中断するが、メジャーリーグは配慮しない。
ロサンゼルスで復帰なるか
野球がオリンピックという枠組みにおいて中途半端な地位にとどまらずを得ない状況を突き詰めてみると、世界のトップ選手が出場しないオリンピック野球の問題がその根底にあるだろう。言い換えると、メジャーリーグのトップ選手が登場しないオリンピック野球は、世界大会として物足りないのである。
7年後の2028年のオリンピックは、米国ロサンゼルスでの開催となるため、野球が正式種目として再復帰する可能性は大いにあるだろう。IOCがロサンゼルス五輪の種目・プログラムを決定するのは来年度に予定されている。ロス五輪で野球が復活し、米国が金メダルに再挑戦する可能性は高いとの見方もある反面、メジャーリーグの協力がなければ道は険しいとの見方も強い。