NPBにおける「クオリティスタート」の妥当性を考えてみる

どうも野球好きのためのフォーラムサイトgeek894.com管理人の894です。

今回は、近年先発投手の評価方法の一つとして大きく注目されている「クオリティ・スタート」という指標のNPBにおける妥当性について考えてみました。

素人なりにいろいろ考察してみました(笑)

「クオリティ・スタート(QS)」とは

「クオリティ・スタート(QS)」とは、先発投手の評価指標の一つで、「先発投手が6回以上を投げて3失点(自責点)以内に抑えること」を意味します。

上位の指標として「ハイクオリティ・スタート(7回2失点)」というのもあります。

2015年の黒田博樹投手の日本球界復帰あたりからよく耳にするようになりましたね。

(もちろんそれ以前から認知されていましたが)

「クオリティ・スタート:Quality Start)」を直訳すると「すばらしい先発」という意味になりますが、「6回3失点ですばらしい先発?」と疑問にもたれ方も少なくないのではないでしょうか。

実際、私もその一人で「一体どこが有益な指標なの?」と思っていました(笑)

そんなわけで、「QSの有益さはどこにあるのか?」「QSはNPBにとっても妥当な指標なのか?」といった点を考察していきます。

2016年シーズンのQSと各データの関係

クオリティ・スタートはどれほど有益な指標なのかを検証するために、いくつかのデータとの相関関係を調べてみました。

一応説明しておきますが、相関関係とは「複数のものごとの関連度合い」のことを指します。それを数字で表したものが「相関係数」です。相関係数は-1~1の範囲で表され、1もしくは-1に近いほど相関関係が高いとされます。

詳しくは統計学について調べてみてください(笑)

ちなみに今回も「ヌルデータ」さんのデータを使わせていただいています。(2016年度データ)

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各チームのQS率と勝利数の関係

勝利数 QS率
広島 89 62.2
巨人 71 57.3
横浜 69 53.8
阪神 64 60.8
ヤクルト 64 41.3
中日 58 51.7
日ハム 87 54.5
ソフトバンク 83 64.3
ロッテ 72 55.9
西部 64 45.5
楽天 62 53.8
オリックス 57 49
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まずは各チームの勝利数とQS率を並べてみました。

相関関係は0.601でした。

それほど高い値ではありませんが、まったく無関係ではないようです。

グラフを見てみると似たような曲線を示していることがわかります。

やはり先発の安定感が高いチームほど勝利を重ねやすい傾向はあるようです。

先発投手の勝敗とQS率

名前 勝利 敗戦 QS率
菅野智之 9 6 84.6
ジョンソン 15 7 92.3
野村雄輔 16 3 68
田口麗斗 10 10 73.1
岩貞裕太 10 9 72
メッセンジャー 12 11 78.6
黒田博樹 10 8 66.7
石田健太 9 4 60
藤浪晋太郎 7 11 69.2
井納翔一 7 11 52.2
能見篤史 8 12 58.3
小川泰弘 8 9 52
石川歩 14 5 78.3
菊池雄星 12 7 77.3
千賀滉大 12 3 72
則本昴大 11 11 78.6
有原航平 11 9 77.3
武田翔太 14 8 66.7
涌井秀章 10 7 73.1
和田毅 15 5 70.8
スタンリッジ 8 8 63
金子千尋 7 9 69.6
塩見貴洋 8 10 66.7
西勇輝 10 12 53.8
美馬学 9 9 40
ディクソン 9 11 55.6
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続いて昨年度の先発陣の勝敗とQS率の関係です。

相関関係は勝利数が0.492、敗戦数が-0.304でした。

これに関してはあまり関係なさそうですね(笑)

QS率が高いほど勝ち星をあげやすそうなものですが、昨年の菅野投手のようにいくら抑えても味方の援護が貰えず勝利にいたらなかったというケースもあるため、必ずしもクオリティ・スタートが勝利につながるわけではないようです。

ただし、負けについてはマイナスの相関が出ていることを考えると(低い値ですが)クオリティ・スタートを続けていると負けを減らせるのかもしれません。

先発投手の防御率とQS率の関係

名前 防御率 QS率
菅野智之 2.01 0.846
ジョンソン 2.15 0.923
野村雄輔 2.71 0.68
田口麗斗 2.72 0.731
岩貞裕太 2.9 0.72
メッセンジャー 3.01 0.786
黒田博樹 3.09 0.667
石田健太 3.12 0.6
藤浪晋太郎 3.25 0.692
井納翔一 3.5 0.522
能見篤史 3.67 0.583
小川泰弘 4.5 0.52
石川歩 2.16 0.783
菊池雄星 2.58 0.773
千賀滉大 2.61 0.72
則本昴大 2.91 0.786
有原航平 2.94 0.773
武田翔太 2.95 0.667
涌井秀章 3.01 0.731
和田毅 3.04 0.708
スタンリッジ 3.56 0.63
金子千尋 3.83 0.696
塩見貴洋 3.89 0.667
西勇輝 4.14 0.538
美馬学 4.3 0.4
ディクソン 4.36 0.556
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最も高い相関関係を示したのが先発投手の防御率との相関です。

相関関係は-0.845でした。

負の相関(つまり反比例)を示していますが、これは低ければ低いほど良い値である防御率に対して、QS率は高ければ高いほどいい値であるためです。

グラフを見ても綺麗な反比例の形になっていますね。

昨年のタイトル受賞者の菅野投手やジョンソン投手はQS率・防御率ともに高い値を残しました。

ほかの投手たちも概ねQS率なりの防御率を残していることがわかります。

実は、防御率とQS率に高い相関関係が現れるのは当たり前と言えば当たり前のことなのです。

例えば毎試合「6回3失点」で降板すれば防御率は4.5になります。

しかし、実際には「6イニング以上を投げて自責点を3点以内に抑える」ことができればクオリティ・スタートと言われます。

そのため、QS率の高い菅野投手やジョンソン投手は「少なくとも防御率が4.5以上にはならない」ということになります。

もちろん、完封や無失点の投球を続けていけばいくほど防御率もQS率も良い値になっていくので、お互いに相関関係が現れるというわけです。

このように見ていくと、先発投手が成績を残すためにクオリティ・スタートを重視するというのは有益なことと言えるかもしれません。

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MLBとNPBの違い

クオリティ・スタートが先発投手にとって有益な指標であることは分かりましたが、果たしてそれをNPBで適用することが妥当と言えるのでしょうか?

クオリティ・スタートの議論になると、必ず話題に挙がるのが「MLBとNPBの試合日程の違い」です。

元々「クオリティ・スタート」という指標を使いだしたのは、セイバーメトリクスの本場である米メジャーリーグであるため、当然MLBの投手に適用することを前提として作られています。

この事を考えると、たしかにMLBとNPBの投手環境の違いは考慮すべき点であると思えます。

その理由としては主に以下の2点です。

  • 登板間隔が大きく異なる
  • ボールや環境(気候や球場)に差がある

そんなわけで少しだけMLBとNPBの違いという観点で、NPBにおけるクオリティ・スタートの妥当性について考えてみましょう。

MLBとNPBの登板間隔の違い

一番大きな理由は「登板間隔が大きく異なる」点でしょう。

一般的にMLBの先発投手の登板間隔は中4日ですが、日本では中5日から中6日と言われます。

これによって先発に求められるパフォーマンスには大きな違いが現れます。

例えば、最近は100球の球数制限を日本でも取り入れるようになりましたが、中4日の100球と中6日のそれでは1球の価値が当然違いますよね。

もちろん私はプロ野球のローテーションピッチャーじゃないので実際のことはわかりませんが、ある番組のインタビューでNYの田中将大投手が「中5日と中6日では大きな差がある」という話をしていました。

元広島の黒田博樹投手も「中4日の登板間隔に適応するために登板前の準備を大きく変えた」と自身の著書「決めて断つ」で語っていたほどです。

プロの中でも一流の投手たちが口を揃えて「中4日はしんどい」というくらいなので、登板間隔の違いは考量すべき点と言えるでしょう。

ボールや環境に差がある

MLBとNPBの間にある大きな壁として、「国・土地の違い」や「ボールの違い」というのがあります。

ボールの違いをはじめ、土地や気候の差は屋外スポーツである野球に大きな影響を与えているはずです。

これについてのデータを今回用意していないのでちょっと不明確な意見ですが、打者有利の球場が多いリーグでは投手の防御率は悪化しやすくなります。

MLBのアメリカン・リーグでは特にその傾向が顕著ですね。

リーグごとのここ数年の防御率は以下のようになっています。

年度 セ・リーグ パ・リーグ ア・リーグ(MLB)
2011 3.06 2.95 3.94
2012 2.86 3.03 4.1
2013 3.72 3.57 3.87
2014 3.89 3.6 3.74
2015 3.24 3.59 3.96
2016 3.69 3.65 4.22
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これは決して「MLBの打者よりもNPBの打者が劣っている」ということを言いたいわけではありません(笑)

平均して比べてみるとNPBとア・リーグの差は約0.5でした。

こう見ると、NPBにおいてもMLB式のクオリティ・スタートをそのまま適用してしまってもいいのかもしれません。

黒田博樹がメジャーで評価された理由

少し話がそれてしまいますが、黒田博樹投手がMLBで高く評価されていた理由の一つに「優秀なイニングイーターであった」という点があります。

残念なことに、なかなか味方からの援護をもらえないピッチャーとしても有名でQSを達成していながら30敗以上を記録しています。(2008年以降のメジャーワースト)

しかしながら、これはそれだけ数多くの試合でクオリティ・スタートを達成しているという記録でもあり、いかに安定したピッチングをしていたかが伺えます。

どんなに調子が悪くとも毎試合6イニング以上投げてゲームを作っていたという点を高く評価されていたわけですね。

やはり、先発投手の安定感を見る上では有益と言えそうです。

まとめ

今回の考察を軽くまとめてみます。

  • 「クオリティ・スタート」は先発投手の安定感を示す
  • QS率は防御率を高める上で有益な値
  • MLBとNPBの登板間隔の差は考慮すべき
  • 防御率で見るとMLBとNPBの差はそこまで大きくない

「クオリティ・スタート」単体で見るのではなく「QS率」としてみると、先発投手の安定感を見る上で非常に有力な指標となりそうです。

実際に、QS率の高いピッチャーほどすばらしい防御率を残していることもわかりました。

また、よく言われる「MLBの指標をそのままNPBに持ち込むべきではない」という議論ですが、これもリーグ全体の防御率を比較してみるとそこまで大きな問題ではなさそうです。

しかし、MLBとの登板間隔の差というのはやはり考慮すべき問題となりそうです。

「クオリティ・スタート」なんて言い方をするので大層な記録に聞こえるのであって、重要なのはいかに多くの試合でクオリティ・スタートを達成したのかを表す「QS率」の方でしょう。

「Pitching Stability(投球の安定感)」といった形に言い直せばしっくりくるかもしれませんね(笑)

実際、毎試合クオリティ・スタートを達成したところで防御率は4.5にしかなりません。

防御率4.5というと、リーグ平均を大きく下回る投手であり、どうしても「安定感はあるけどエースにはなれないピッチャー」という評価になってしまいます。

(もちろん非常に価値のある投手であることに変わりはありません。)

今後、クオリティ・スタートという指標がさらに市民権を得ていくことは間違いないと思いますが、この指標をどのように解釈していくかがこれからの課題となりそうです。

最後までお付き合いありがとうございました!

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